2021.5.15 富山県黒部川河口の弩級マダイ(上村慧介氏)

※磯投げ情報8月号より

2021年5月

仕事の関係で富山県へ転勤して二年。私は密かにあるものを狙っていた。
富山県といえば、ホタルイカが有名だが、毎年3月〜5月頃、その多くが浜や岸壁に接岸する、ホタルイカの身投げが行われ、県民はそんなホタルイカを追い毎年沿岸部はホタルイカ掬いで賑わっている。
釣り人も同じく、そんなホタルイカを追って、沿岸部に接岸してくる魚を狙って各地からアングラーが訪れる。
今回私は、その中のターゲットの一つで、魚の王様と呼ばれる「マダイ」に狙いを絞ることにした。
富山県を始めとした北陸地方では、春のホタルイカの時期になると、「ホタルイカパターン」という、ホタルイカの疑似餌を使って魚を狙う釣りが主流になる。
この「ホタルイカパターン」は、今回狙ったマダイをはじめ、クロダイ、メバル、カサゴ、キジハタ等色々な高級魚を手軽に狙うことができる。
しかし、ずっと疑問に思っていたことがあった。ホタルイカパターンをやってる人はよく見るけど、北陸はぶっ込み釣りしてる人あまりみかけないなぁ。
もしかして当たりすぎて面白くないからなのか?それともフグ等の餌とりにやられてしまってぶっ込みでは釣りにならずにルアーなのか?物は試しにやってみよう。そう思い、翌日も早くから仕事があったも関わらず仕事終わりに生ホタルイカがないかスーパーに行った。すると…運良く2割引きのシールが貼られた生ホタルイカを購入することができ、釣り場へすぐさま向かった。

この257円のホタルイカが伝説を生む


仕事での残業とスーパーで買い物をしていたのもあり、夕マズメに間に合うことが出来ず、午後7時から釣り座を構える事となった。まだ微かに明るいが、ヘッドライト無しでは釣りにならない。もうすっかり夜だ。
いつもの自分のぶっ込み釣りのスタイルで竿と仕掛けを2セット用意し、1セットホタルイカをぶっ込み、もう1セット用意している時だった。開始10分足らずでいきなりとてつもないドラグ音。走り。すぐに合わせを入れ、やり取りした。1分かからないくらいで手前まで寄せ、浮かせ、姿が見えた。「真鯛だ!」。いきなりの本命に興奮が止まらなかった。ぱっと見ても70cmはあるんじゃないかというサイズ。しかし、残念ながらこの真鯛は手前にあった沈み根に走りその後すぐに切られてしまった。
「バカなー!」
悔しさのあまりそう叫んでしまった。姿まで確認して取り逃した魚ほど悔しいものはない。
しかしまだ釣りは始まったばかり。すぐさま仕掛けを組み直し、ホタルイカを付け当たりを待つ。それからは1時間毎に餌替えをするが当たりがない。やはりあの一発で取らなければならなかったか。
餌のホタルイカも残り2匹。次の打ち替えがラストチャンス。帰りの時間も迫り、少し焦りが出始めていた午後10時。悔しさのあまり友人と通話をしている最中、再び強烈な当たりが出た。
すぐ竿を手にとり、追い合わせを入ると…あの時と同じ引き込み方。間違いない、真鯛だ!
一度目が手前の沈み根に行かないよう強引なファイトをしすぎてしまった反省点も踏まえて、二回目は慎重にやり取りをした。魚が引き込む時に合わせてリールの糸を出し続け、ドラグはほぼフリー。
根に突っ込まれようが何されようが、あえて糸を出し、魚に主導権を与えつつ、魚が浮いたタイミングで、巻き上げるを繰り返す。
約5分ほどでその魚は手前まで浮いてきた。近くの人にランディングしてもらったが、重かったようでなかなか上がらない。ヘッドライトで姿を確認すると、普段見るサイズとは明らかに別格の規格外サイズの真鯛であった。
車の中からスケールと重量計を持ってきて計測してみると…
84cm 10.2kg

マダイ
ショアレッド10kgオーバー


想像を遥かに超える怪物であった。
まさか初めてのぶっ込み真鯛でいきなりランカークラスが出るとは思わず、興奮と感動が止まらなかった。持ち写真とスケール写真をとり、持ち帰ろうかと考えたが、時刻はもう深夜。翌日の仕事の事もあり、その真鯛はランディングしてくれた方にあげる事にした。
地元の方で同じく真鯛を狙っていたようで、ここまで大きいのは初めてみたと喜んでくれた。
その後は餌も尽きてしまい納竿。今回の釣りは、今までの釣りの経験が活きた回となりいつも以上に気持ちいい釣行となった。
私は富山県へ転勤する前は生まれてからずっと神奈川県で暮らしていた。神奈川県も京浜工業地帯のど真ん中だったこともあり、釣り物も少ない環境であったが、この環境下いかに大きい魚を釣り楽しむか、そんな事を考えながら学生時代を過ごしていた。その中で色々な人と出会い、大魚とのやり取りで、魚が走ったら糸を止めずあえて走らせ糸を出すやり取りはその中で出会った鯉釣りの師匠から教わったものである。
そこから工業地帯の湾奥に潜むドチザメやアカエイを狙うようになり、一緒にやってきた仲間と、釣りのジャンルとして確立させたいと思い、近年ではベイシャークと言う名前でジャンルとして確立し、昨年からはベイシャークダービーと言う大会まで開催できるまでになった。

横浜工業域のドチザメブッコミ釣り「ベイシャーク」

そんな今までの釣行での経験、仲間や師匠のおかげではないといっても過言ではないくらい、今回の釣行は人生の1ページに残る釣行となった。
最後に、これだけの大物を釣り上げたが魚拓を取らなかったのは少し後悔したが、この一匹だけの釣果に浸る事なく、これからも魚釣りの技術を磨くのみならず、まだ生まれていない未来の釣りジャンルの進歩、発展にも貢献していきたい。

管理人コメント

私も腕を磨くため何度もお世話になり楽しませてもらった「ベイシャーク」釣り。その発起人の1人であるけいすけ氏。ドチザメの強烈な引きをドラグと竿捌きで何度も去なす動作を繰り返す彼ら。その大物とのやりとりの腕前は既に完成されているように見えた。実際、10kgを越すマダイをバラさず見事釣り上げることに成功した様子から間違いなくあのベイシャーク釣りで培われたやりとりの技術は遺憾無く発揮されたのだろうと想像できる。脱帽です。おめでとう‼︎‼︎

投稿者: kajitani28

沼津・伊豆半島をホームに大物を狙う投げ釣り師です。

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