「車椅子の大物キャスター」舟橋さんの軌跡 パート2

☆ 金子さん生前に磯・投げ情報に掲載したコラム原稿の一部を紹介 ☆

舟橋さんのことを紹介するコラム原稿です。
舟橋さんといえば、80cmオーバーのマダイや70cm級のハマフエフキ、コロダイ等を筆頭に数多くの大物を仕留めている関東でも指折りのキャスターです。釣った魚の大きさ、数も驚きですが、特筆すべきは彼の釣った大物は全て伊豆や伊豆大島と行った関東からの日帰り圏内であるということです。それも全てバリアフリーの堤防からです。大物狙いで地方に遠征するキャスターも多いなか、これは特筆すべき事だと思っています。そんなMidNightCastersの顔とも言える彼について、今回は語ってみます。
 舟橋さんは車椅子に乗っています。彼は脊椎損傷により腹部から下の体に力が入らず、立つことも出来きません。座っても背もたれがなければ、手で体を支え続けていないと倒れてしまうほどです。彼は底に錘の入っていないダルマのような状態なのです。 元々釣り好きだった彼、二十歳の時の事故により、不自由な体になる。車椅子で行動できるようになると釣りを再開し、横須賀方面の堤防に通ったそうです。対象はカレイ、アイナメです。ですから彼は最初からマダイ等の大物を狙っていた訳ではありません。 今から16年ほど前、当時はMidNightCastersを創設した頃ですが、僕宛にメールしてきました。「マダイを釣りたいんです」と。僕と知り合った2000年位の頃の彼は、うみかぜ公園でのカレイ・アイナメ釣りには精通していましたが、まだ鯛系の魚は未知の魚だったようです。当時の僕らはまだ伊豆半島での大物釣り場を模索中で、マダイは数箇所の堤防で実績を出していましたが、ハマフエフキ、コロダイといった磯魚は伊豆大島や神子元島、西伊豆の磯がメインの釣り場でした。 最初の頃は相模川河口のキビレ狙いなどが鯛系の魚狙いでしたが、沼津や西伊豆へ行動範囲を広げていきました。そして2003年に舟橋さんを含む釣友7名で田子の尊之島沖堤防へ渡船で渡って夜釣りをしました。このときは大型外道だけで終わりましたが、舟橋さんにとっては記念すべき渡船を使った釣りになりました。このときに彼に水が入った4Lのペットボトルを投げ竿で吊り上げる練習をしてもらいました。前述のように彼は足で体を支えられないので、バランスを失えば車椅子上から転げ落ちてしまいます。片手で竿を持ち、もう片方の手で車椅子の肘宛を掴んで体を支えるのが精一杯で、当時の彼はリールを巻くことが出来ませんでした。 弩級ハマフエフキはもとより大型エイ等の突進力は凄いです。掛かった魚を寄せるために彼が左手で竿、右手でリールのハンドルを持つと、両手が塞がってしまいますので体を支えることは出来ません。なので彼は車椅子の背もたれに後ろへ仰け反るように上半身を預け、魚の引きとのバランスをとっています。しかし、これは仕掛けが切れたり、針が外れたりしたときに、後ろへ転倒して後頭部を地面で打つことになります。そこで彼は同行者を呼んで後ろに立たせてから、やり取りに入っていました。魚の大きさによっては、同行者が彼の両肩を手で掴んでアシストすることもありました。 大物狙いの仕掛けでの根掛かりも深刻です。8号以上の道糸を根掛かりで切るときも大型魚とのやり取りのように背もたれに仰け反るように上半身を預けるのですが、予想より前に仕掛けが切れてしまうと、重心が車椅子の後ろにあるために、後ろへ転んでしまいます。また切れなかったときに、伸びた道糸が縮もうとする反発もものすごいです。これは逆に前に引き倒されてしまいます。なので、最初の頃は同行者がアシストして、彼が倒れないようにしていました。 でも今では彼はアシストなしです。大型魚とのやりとり、根掛かりはもとより、大型魚の取り込みも車椅子に乗ったまま、タモ入れして引き上げます。そうそう、車椅子はブレーキが重要だそうです。タイヤが磨り減ったり、濡れたりしてブレーキが利き辛いと魚の引きや道糸の縮みで車椅子が海側へ動くからです。離島の堤防は傾斜がついていることもあるので、そこもブレーキが重要な理由のひとつだそうです。一時期、彼は車椅子にウィリーバー(オートバイのドラッグレースでスタート時に前輪が高く浮き上がらないようにするアシスト輪)を車椅子につけていましたが、釣り場での機動性がネックで外してしまいました。なので、彼は離島での釣りでは後ろへの転倒に備えてヘルメットをしていました。 そうそう、舟橋さんは伊豆大島での大物投げ釣りの先駆者です。彼の同級生の伊藤さんと2003年から通い始め、元町港や波浮港などで数多くの弩級マダイ、ハマフエフキ、コロダイを仕留め続けてきました。当時は場荒れも一切なく、行けば確実に釣れてましたが、釣れる情報が広まり、多くのキャスターが通いだしてからは場荒れが進んで、釣り場を知らないキャスターが行っても、なかなか釣れないようになってしまいました。でも釣り場に精通した舟橋さんは、大物を仕留めて続けてきました。伊豆大島にはもう50回以上釣行していると思われます。他にも神津島、八丈島なども通っていました。

☆ 思い出の釣果 ☆
2007/11/24 伊豆大島 マダイ80cm

2008/06/14 西伊豆小土肥 マダイ82cmwith 金子氏


2004/07/24 伊豆大島 ハマフエフキ69cm


2009/04/04 沼津木負 イシダイ53cm


2010/07/03 西伊豆下村 コロダイ72cm with 金子氏マダイ72cm


2015/12/14 西伊豆田子 コショウダイ54cmwith 政本


2016/11/26 西伊豆大久保 コロダイ73cmwith HIRO


尚、この掲載の計測サイズは自己記録最大サイズでは御座いません。
掲載しきれなほどの大物を釣っている舟橋さん。当時は、舟橋さんはじめ、先駆者の方々の釣果や釣行記を食い入るように見ては興奮したものでした。これからも新たなホームページにも大物記録に華を添えてくれることを期待します!

構成、1部編集 MNC政本

管理人コメント

生前、磯投げ情報にて投げ釣りのコラムを掲載していた金子さん。突然の訃報により、最後の記事となったのがこの舟橋さんのお話でした。今から10年程前になりますが大変恐縮ながら金子さんと舟橋さんの釣行に一晩だけ同行させて頂いたことがあり、2人の間柄を目の当たりにしていたので最後となってしまった舟橋さんについて書かれた記事を胸が詰まる思いで拝見させて頂きました。私自身、金子さんから教えていただいた大物投げ釣りの楽しさを忘れることなく、ターゲットや狙い方は少しずつ変化してますが今もまだ投げ竿を振り続けており、こうして大変恐縮ですが常連さん方に見つけて頂き、再開したミッドナイトキャスターズの運営をさせて頂いております。キャリアや釣果は追いつくのにまだまだ時間がかかりますが、皆様に愛読して頂けるような大物投げ釣りのブログを目指していきます。

投稿者: kajitani28

沼津・伊豆半島をホームに大物を狙う投げ釣り師です。

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